こんなのあり?悪徳まがいの広告



「広告が邪悪なのは、邪悪なものを広告するときだけだ」―――デイヴィッド・オグルヴィ





広告の真実について、私が強烈な衝撃を受けたのは長女の妊娠がきっかけでした。

初産ということもあり出産について何も知らなかった私は、当たり前のように本屋へ行き有名どころの雑誌と、なんとなく「良さげだな~」と思った育児書一冊を購入しました。

雑誌や育児書には、出産にまつわる補助金の申請の仕方や妊婦さんへのおすすめレシピ、赤ちゃんの着替えのさせ方、お風呂の入れ方など、参考になる記事がたくさん載っていました。

ご丁寧に出産準備品リストまでついています。
その中には、粉ミルクと哺乳瓶もありました。

なんの疑問も持たずリストに沿って出産準備品を用意しながら、私はわが子の誕生を心待ちにして過ごしていました。
その後、無事長女が生まれました。



私は「母乳で育てよう」と決めていました。
勤めていた会社の先輩から「母乳で育てるといいよ」と、アドバイスをもらっていたからです。

実は私は子供が生まれたら勝手に母乳が出てくるものだと思っていました。
(今にして思えば、雑誌や育児書に母乳育児に関する記載はきれいさっぱり抜けていましたしね。)

しかし現実は違いまいた
(母乳育児をするためには、ちょっとしたコツがあり、そもそも病院選びから気を付けなくてはならなかったのです。)





病室には当たり前のように、哺乳瓶と粉ミルクが置かれていました。

「赤ちゃんが泣いたらミルクを飲ませてあげてね」
看護師さんが親切に、粉ミルクのつくり方を教えてくれました。

「あれ?初乳って一番大事だって育児書に書いてあったけど・・・。
飲ませなくていいんですか?」

「お母さんは出産で疲れているから、今日は休んでね」とのこと。

「ふ~ん、そんなもんか。」

そしてその後も、毎日哺乳瓶と粉ミルクがたっぷり用意され、授乳指導は一切なく退院までを過ごすことになりました。

出産翌日には、胸がカチカチで痛くなるほどになりました。
熱も持っています。
でも看護師さんに聞いてもお医者さんに聞いても対処なし。
しばらくするとカチカチは治まったものの、今度は「本当に出てるの?」と心配になりました。

退院の時は、「病院からプレゼント」ということで大きな紙袋が渡されました。
中身は粉ミルクの缶が3個と哺乳瓶が2本入っていました。
粉ミルクの会社のパンフレットと共に。



退院してからは、母乳とミルクの混合育児。
でも、何か違和感を感じた私は母乳育児について調べ始めました。

当時は自宅にネット環境がなかったので、携帯で一生懸命ヒントを探したのを覚えています。

そこでようやく、ずっと求めていた母乳育児の知識に出会うことができたのです。
信頼できる書籍の名前を知ることもできました。





なぜこれほどまでに母乳育児について情報がなかったのでしょうか?

雑誌を買ったり、育児書も読みました。
看護婦さんにもお医者さんにも聞きました。
それにもかかわらずです。



ひたすら考えて思い至った答え。
それは思いもよらない答えでした。



スポンサーです。



雑誌にも広告主がいます。
育児書の出版社も雑誌を発行しており、そこには広告主がいます。
病院も粉ミルクや哺乳瓶のメーカーから謝礼金を受け取っていたのでしょう。

スポンサーに都合が悪いことはできないってことですね。

混合育児から、母乳育児に戻すために私と娘は、不必要で、しかも大変な苦労をすることになりました。



このように母子の健康を害してまでも、商品を押し付けることは「邪悪なもの」ではないでしょうか?




粉ミルクや哺乳瓶が不必要だというワケではありません。
現に、母親の病気が原因で授乳ができない人もいます。
何らかの母子の機能上の理由で、授乳が困難なケースもあります。

そういった、困っている人たちには、粉ミルクも哺乳瓶も必ず届くようにしなければなりません。
同時にそういった、困っている人たちのために、より良い製品の開発を私は常に望みます。

一方で、何にも問題のない親子にまで、経済性を優先して不必要な商品を売りつけるのは悪徳以外の何物でもありません。





更に残念なことに、こうしたメーカーは、後進国で支援活動と称して粉ミルクと哺乳瓶を提供しています。

きれいな水もなく消毒すらまともにできない環境で、粉ミルクが使えるはずもありません。
その上、数も不十分です。
しかも、高価で一般の人々には買えない代物です。
使い切ったら、買い足すことがなかなかできないのです。

子供に粉ミルクを与えることで、母乳の分泌は悪くなります。
それによって、より多くの粉ミルクが必要になります。

そのせいで「母乳は出なくなり、粉ミルクも買えない」という最悪の事態を引き起こします。

本来なら劣悪な環境であればこそ、子供は母親から母乳を介して免疫を受け取らなくてはなりません。
粉ミルクに免疫は含まれません。
ですから、子供の病気に対する抵抗力も弱くなってしまいます。

(この場合本当に必要だったのは、母親への栄養のある食事と必需品を買うためのお金です。)

善意からにしろ「援助」という名のこうした取り組みは、結果的には母親から幼い子供を永遠に奪ってしまいかねないのです。



一見して、邪悪ではないと思える広告にもこんな裏側があるのです。

必要な人にだけ必要な商品やサービスを届けたい。
私はそう思っています。

あなたはどう思いますか?






PS:本当に後進国の人たちを援助したいならば、是非「お金」を寄付してあげてください。

PPS:12年以上前のお話です。
現在の状況は調べておりませんので、ご容赦ください。